🎶ブルーネオン
『 天空の恋人館 』
10 快盗 vs 王子
〈快盗シルクキャッツ〉は、8年前、ルーブル美術館館への侵入で話題になった。
その後もいくつかの美術館に出没。絵画を盗むわけではなく、何かを探していた。
噂によると、シルクキャッツは変装の名人で、年齢は不詳。
シルクのような肌の女性の心を奪い、自らもシルキー肌とか。
シルクキャッツは美術関係の女性で、
ペンダントをしている女性とデートし、
その中を調べた痕跡を残している。
シルクキャッツは何の目的で、
そのような行為を繰り返しすのだろうか━━。
ペンダントを身につけた女性たちへの聞き取り調査では、
吸い込まれるほど美しい瞳と美声の持ち主で、
かすかに甘い香りがしたとか。
口説き上手で、変装したシルクキャッツと恋に落ちた女性は数知れない。
ペンダントはその場で元通りに戻しているので、
被害届けは提出されていない。
シルクキャッツが恋人館に初参上したのは5年前。
世界的な女優のペンダントが盗難
(実際は盗難されてはいなかったが)されたことで、
恋人館が世界中のセレブの関心を煽ることになった。
大ヒット中の邦画、〈マスカレードハウス〉の原作者、
青柳一生は、5年前の恋人館仮面舞踏会に出席し、
マスカレード(仮面)を思いついたと噂されている。
スクールの先輩、司と愛が主演に抜擢され、
リリカとうららは鼻が高かった。
シルクキャッツは、今年のXmasに、
一体、何をしようというのだろう?
亜梨沙の手に舞い降りてきたカードの中身がますます気になる。
一方、同じく美形だといわれているのが《ゼロの王子》。
とある王国から突然籍を抜き、
ある目的のために神戸に恋人館を建てたと噂されている。
神戸は忘れられない思い出があるという。
莫大な財産をもつ資産家である。
執事の高梨によれば、
ゼロの王子は、恋人館の最上階ペントハウス
からほとんど外へ出ないらしい。
彼がデリケートで、いい得ぬ悲哀を抱いているのは、
10年前から特殊な発声障害に陥り、
生きがいにしていたオペラ歌手生活を休止したからである。
彼の声を聴いたスタッフは誰ひとりいなかった。
本当に話せないのだろうか‥‥。
ペントハウスへの出入りは、
高梨とベスという女性ら数名のスタッフのみとのこと。
ベスとの関係は不明だが、聡明で、
魅力的な容姿の主であることから、
館のスタッフたちは、王子の愛人ではないかとみている。
王子は夜間になると、
時折、フランス製 L社開発の空飛ぶバイク:Pluvier(プリュビエ)
で移動している姿を、スタッフに見られていた。
天空を飛び回る王子の住まいを、
いつしか《天空の恋人館》といわれるようになったという。
ゼロの王子、さらに謎が深まった。
快盗シルクキャッツ とゼロの王子
果たして、二人の関係は━━?
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